父のALSの進行と意思伝達装置の変遷

2011年、父がALS(筋委縮性側索硬化症)と診断されました。
ALSを患うと運動神経が侵され体が動かせなくなっていきます。
父の場合は脚から症状が始まり、どんどん動かせない箇所が増えていきました。
進行は比較的早く、2013年はじめに気管切開をして、人工呼吸器をつけた生活が始まりました。

1. 伝の心

意思疎通や生活をスムーズにするために意思伝達装置「伝の心」を使い始めました。
「伝の心」の公式Webサイトはこちら
購入時は市の助成金が下ました。
◎この時点で父が自力で動かすことが出来た体の箇所・・・「首から上」「左手の指先」

1.1 「伝の心」の操作

最初は左手に空気圧型のスイッチを軽く握って操作していました。
パソコンでの仕事を以前から行っていたこともあって、父が「伝の心」の操作に慣れるのは早かったです。

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伝の心のメイン画面

白いパネルが順番に青色に切り替わり、その時にタイミングよくスイッチを押すとパネルに書かれた動作が行われます。

1.2 「伝の心」の機能

「伝の心」で一番使っていた機能は「日常使用文」の機能です。
「日常使用文」は普段良く使う文章をあらかじめ登録しておき、僅かな労力でそれらを音声として出力できる機能で、五十音表を使って一から文章を入力していくよりも格段に早く父の目的を達成できるようでした。

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「日常使用文」のトップ画面

とにかくたくさんの「日常使用文」を登録しました。
「○○(体の部位)を動かして」「テレビの音量を上げて」「○○の音楽をかけて」等など。。
思いつく限りの要求を登録していきました。
日常使用文は階層構造に出来るので、要求のジャンル毎に階層を分けて配置しました。
父も使っていくうちに自然と配置を覚えていったようです。

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「日常使用文」の設定画面 ここはマウスを使って介助者が操作する

1.3 「伝の心」のその他の機能

伝の心はマウス操作が出来る機能が備わっています。
そのほかの機能と同じように、タイミング良くスイッチを押せば、押した方向にマウスが動く仕組みです。

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「伝の心」で囲碁ソフトを操作している場面

父はこの機能を使い、趣味である囲碁を楽しんでいました。
またメール機能もよく利用していました。

1.4 スイッチの変更

数か月後に左手が完全に動かなくなり、スイッチを使う体の部位を変更する必要が出てきました。
残る運動機能は顔のみ。 比較的良く動いた左眉にセンサー型スイッチを貼り付けて、 左眉が動くと伝の心が反応するようにしました。

1.5 「伝の心」使用の終わり

意思伝達装置として十分に働いてくれた伝の心だったが、 眉の動きが鈍くなり、センサー型スイッチを押せなくなってしまい、 使用を諦めざるを得なくなりました。
メガネ型の赤外線スイッチなども試したが、うまく機能しませんでした。
「伝の心」は約9ヶ月使用していました。
眉の動きが鈍くなり始めたころ、次の意思伝達装置「マイトビー」のお試しレンタルを始めました。

2.マイトビー

2014年4月頃からマイトビーを使い始めます。
「マイトビー」の販売代理店クレアクトのページ
こちらも購入時に市の助成金が下りました。
◎この時点で自力で動かすことが出来た体の箇所・・・「まぶた」「眼球」

2.1 マイトビーの操作

マイトビーには非常に高性能な視線検出装置がついています。
事前の調整は少し必要ですが、かなり正確に「自分が画面のどこを見ているか」を捉えてくれます。
マイトビーには「トビーコミュニケーター」というソフトが入っていて、このソフトを使ってパソコンの画面をカスタマイズし、その画面の特定の位置(自由に変更可能)を見ることでマイトビーを操作します。

2.2 マイトビーの機能

マイトビーのトビーコミュニケーターは、伝の心よりもカスタマイズの自由度が高いです。
視線によって操作するパネルの、大きさ・色・文字・絵・位置・そしてどんな動作をするかまで、 非常に細かく設定できます。

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「トビーコミュニケーター」の編集画面

まずはこの機能を使って、伝の心で使っていた「日常使用文」の項目をそのままマイトビーにコピーすることにしました。(コピーといっても自動でコピーしてくれる機能はないので手作業で一つ一つ作りました)
位置や文章、階層構造をそっくりそのままで視線で入力できるようにしました。

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「マイトビー」内に移行させた日常使用文

これにより伝の心からマイトビーへスムーズに移行することができました。

2.3 マイトビーのその他の機能

その他の機能も、父の要望で何度もカスタマイズを繰り返しました。
・呼び出しブザーのパネルを全ての画面に設置する
・五十音表を操作しやすいように変更する
・メールを編集中に誤って消してしまう動作をなくすために編集画面を調整する
など、あらゆる画面に調整を加えました。
またマイトビーでもマウス操作が出来る機能が搭載されていましたが、 それは「視線が向いている所にマウスカーソルを移動させる」というもので 父の趣味である囲碁を行うには精度に問題がありました。 そこでマイトビーのカスタマイズ機能と自作のプログラム(※下記の自作プログラムとは別のもの)を組み合わせて狙ったところに正確にマウスカーソルを動かせる機能を作りました。
この機能を使って囲碁やインターネットを楽しんでいました。

3.マイトビー+自作プログラム

※この項目の内容はこちらの記事に詳しく書きました。
マイトビーを使っている間にもALSは進行していきました。 目の動きがだんだんと鈍くなっていくのです。 マイトビーを使い始めて約4か月後、今まで主に使っていた「日常使用文」「五十音表」が使えなくなりました。 狙ったところにうまく目を動かすことが出来ないからです。 「目を左右に動かす」程度の動きならまだ可能だったので、マイトビーのトビーコミュニケーターによるカスタマイズ機能と自作のプログラムを組み合わせて、マイトビーを再び使用できる仕組みを作りました。
◎この時点で自力で動かすことが出来た体の箇所・・・「まぶた」「眼球」※どちらも動きが鈍い

4.その後

2015年11月現在、ALSの症状はさらに進行し、既存の意思伝達装置を使うことは困難になっています。 なんとか意思がくみ取れないかと試行錯誤中です。

2 COMMENTS

大林正孝

マイトビーへの助成は何市からしてもらったのですか?
視線入力装置を補そう具として認めている自治体をご存知なら教えてください。
私の住む別府市にお願いしようと思います。

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Inagaki

兵庫県豊岡市です。
申請後、マイトビーの必要性確認のために市の職員の方が我が家へ訪問されました。
そしてしばらく後(1~2ヵ月後)に支給が決定しました。
こちらhttp://blog.canpan.info/alsmiyagi/archive/17のブログ後半でマイトビーと補装具について詳しく解説されています。

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